真実はいつもひとつ!―「日本人は洋画を無視して邦画ばかり見ている」は本当なのか。

アベンジャーズよりも名探偵コナンがヒットする日本の映画界で起こっていること

こんにちは、akiです。

今年のゴールデンウィークは前代未聞の10連休で、多くの人がいつもとは違った特別な休みを楽しんだのではないでしょうか。その中でも、映画を見たという方は多いと思います。

家族、友人、恋人、どんな人といるときにも楽しめる映画は休日のお出かけの候補には必ず入ります。そんな映画界で、ちょっと変わったことが起きました。

アベンジャーズよりコナン!

このゴールデンウィー直前に公開された「名探偵コナン 紺青の拳」が日本全国で大ヒット、5月4日~5月10日の週間ランキングでは、全世界中で大ヒットしている1位を獲得している「アベンジャーズ」を抜いてなんとこの映画がトップに立ったのです。

このことは「日本人が洋画よりも邦画を好む」ことや、俗にいう日本の現代文化の「ガラパゴス化」を示すものとして揶揄するような文脈で語られました。

本当に日本人は洋画ばかり見ているのか?「真実」はどうなのか?

コナンのあの決め台詞よろしく、データを基にこの問題を考察してみたいと思います。

この記事の主張の基となるデータ

この記事は、日本国内での歴代映画興行収入ランキングのデータを基に主張を展開してきます。まずは、どのようなデータを使うのかを最初にお示しします。データ元は、「興行通信社」が提供している「CINEMA ランキング通信」というサイトです。

 ・歴代興行収入ランキング 1位~20位
 ・Best20の邦画・洋画別興行収入比較
 ・歴代興行収入ランキング 21位~50位
 ・Best50の邦画、洋画別興行収入比較

この順番でデータを見ていきます。ここで、このランキングは「見た人の数」ではなく「収益」でランキングしていることに注意すべきです。というのは、週間の映画ランキングは観客の数で出ているからです。

それでは、歴代興行収入ランキングBest20を見てみましょう。

ジブリ作品の大健闘も、10位以下は洋画の独壇場

歴代作品の興行収入1位~20位はご覧のようになっています。数字のところが黄色くなっているのは洋画です。グラフでは、青色が邦画、黄色が洋画になっています。

歴代映画興行収入Best20(2019年5月19日現在)
※赤字「ボヘミアンラプソディ」はまだ公開中のためさらに順位上昇の可能性あり。

不動の1位の座は「千と千尋の神隠し」、その他に「ハウルの動く城」「もののけ姫」とジブリ作品が3つランクインしています。さすが世界に誇るジブリ作品です。

そして、近年の邦画としては「君の名は。」が4位にランクインしています(※7月29日追記:新海誠監督の最新作、「天気の子」がどこまで食い込んでくるかは楽しみです)。さらに、驚くべきことに「踊る大捜査線THE MOVEI2」が7位です。これには驚きました。

一方で、洋画の多さが目につきます。1位こそ邦画ではあるものの、2位「タイタニック」3位「アナと雪の女王」はいづれも洋画。ハリーポッター・をはじめ、そうそうたる洋画がランクインしています。特に「崖の上のポニョ」(これもジブリ)から「風立ちぬ」(これもジブリ!!)まではすべて洋画です。

詳しく見るまでもなく洋画の圧勝ですが、実際に数字で見るとその差がよくわかります。

詳しく邦画と洋画を比較してみると、ベスト20のうち洋画13作品に対して邦画は約半分の7作品、収益額も800億円近い差があります。

真ん中が作品数、右が収益額

これは日本人は洋画により多くのお金を払っていることを示すものであり、少なくともデータの上では洋画の方をよく見ていることがよくわかります。

Best 50まで広げてみてみよう―コナンはどこだ。

Best 20だけでは範囲が狭いと思ったので、上位50位に拡大してみてみます。これなら邦画もたくさん入っているはず、、、

あれれ?

さらに洋画(数字の部分が黄色)の割合が増加したことが一目見てお分かりいただけるかと思います。驚くべきことに、21位から42位までは『踊る大捜査線』と『子猫物語』の2作品を除いてすべて洋画です。

日本はアニメ映画が有名でみんな見ているから、洋画よりも邦画がよく見られていると思いがちですが、「真実」は全く逆です。これはおそるべきことです。

ちなみに、あれだけ騒がれていた名探偵コナンシリーズは、昨年公開された『ゼロの執行人』が46位がシリーズ最高位です。おそらく今回公開された新作は『ゼロの執行人』を超えるのではないかと思いますが、それでも40位台にとどまるのではないでしょうか。

最後に1位から50位までの邦画、洋画の数と収益額をみます。

50作品のうち、邦画はたった14作品でした。なんと作品数は洋画が2.5倍以上も多いのです。興行収入も邦画14作品はBest50にランクインした洋画全体の2分の一以下。もちろん作品数にこれだけ差があるのですから当然と言えば当然ですが、これはかなり衝撃的な数字です。

真実はグロテスクだった

以上、興行収入のデータに着目して「日本人が本当に邦画ばかり見ているのか」を考察しました。このデータから結論づけられることは、「日本人はむしろ洋画をたくさん見ている」という真逆のものでした。

この結果には調べていても本当に驚きました。これは本当に日本で起こっていることなのか、データの方が間違っているのではないかと疑いたくなるような差でしたが、これが真実です。

かくいう私も、この記事を書くまでは「日本は有名なアニメ映画がたくさんあるし洋画なんて蹴散らしているだろう」などと思っていたのですが、今となってはこの甘い考えを恥じるばかりです。

このデータは私たちの思い込みに気づかせてくれます。そして、なぜこれだけの大きな差が生まれているのかについて考えなければいけないのではないかと思いました。

お読みいただきありがとうございました。

<参考サイト>

「CINEMA ランキング通信 歴代ランキング」興行通信社、2019年5月15日閲覧
http://www.kogyotsushin.com/archives/alltime/

「CINEMA ランキング通信 週間ランキング 4月」同社、同日閲覧
http://www.kogyotsushin.com/archives/weekly/201904/

「CINEMA ランキング通信 週間ランキング 5月」同社、同日閲覧
http://www.kogyotsushin.com/archives/weekly/

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA