「著作権」はアーティストの為になっているのか

世界最大のセレブになってバンザイ!のはずが、、、?

こんにちは、akiです。

先日、セレブの「金持ち番付」なるものが発表され、見事にテイラー・スイフトが初めてのトップを飾りました!

テイラーの楽曲はたくさん聴いてきましたがどれも素晴らしいですし、先月久しぶりに新曲も出て、これからますますの活躍が期待されますね、、、!

、、、という話ではないのです。

今日は、そのテイラー・スイフトがいまとんでもない問題に巻き込まれているということを書きます。

テイラーが作曲したのに曲の著作権を失う?

実は、彼女はいまデビュー当時から2017年に発表した最新アルバム「Reputation」までに収録されているすべての曲の著作権を失った状態にあります。

もっと正確に言うと、彼女が失ったのはCDなどの方法で複製を作る際のいわば元本となる「マスター音源」に対する権利を失っています。つまり、「マスター音源」への権利がないということは、そこから複製されたCD音源等に対しても権利を主張できる可能性がないということを意味し、ほぼすべての音源に対する権利を彼女は失いました

歌手なのに、自分のが歌った曲に対する権利が一切ないというなんとも奇妙な状態になっているのです。

なぜこんなことが起こったのか?

なぜこんなことが起こったのかというと、それはレコード会社の買収に原因があります

テイラー・スイフトはデビュー開始以来ずっと「ビッグ・マシーン・レーベル」というところから曲を出していますが、今回 実業家のスクーター・ブラウン(Scooter Braun)氏が立ち上げた「イサカ・ホールディングス(Ithaca Holdings ※読み方間違っているかもしれません)」がこの「ビッグ~」を買収すると発表しました。そして、それと同時に「ビッグ・マシーン・レーベル」が管理しているテイラーの楽曲の著作権が「イサカ・ホールディングス」に自動的に移るということを発表しました

これに対してテイラー本人はSNSで “This is my worst case scenario,(考えられる最悪のケースだ)”と書き込んでいます。

一連の動きの中で、「アーティストの意思に背く形で勝手に権利が移動している」ということがこの問題の核心です。なぜなら、そもそも著作権というのはアーティストの著作物が著作者の意思とは違った形で使われることを防ぐためにあるものですが、これだと完全にその意味と逆行したことが起きてしまっているからです。

ただ、ここまでの記事をお読みになって違和感を感じた方もいるかもしれませんが、この著作権は「ビッグ~」から「イサカ~」へと、つまり会社から会社へと移っています。では、テイラーからもともとのレコード会社へ権利がいつ移ったのかということが気になりますよね?

これは、7月1日付の「シドニー・モーニング・ヘラルド」が報じていることですが、実はどこかのレコード会社に所属しているほとんどのアーティストは、自らでは自分の楽曲への著作権を保有していない場合がほとんどです。

レコード会社は楽曲の製作、プロモーション等に投じた金を回収するという名目で最初からアーティストのマスター音源の著作権を持っていることがほとんどなのだそうです。というのも、著作権を持っておけば、CDが売れたり、カラオケで歌われたりスコアが出版されたりする度に「著作権収入」が入ることとなり、これによって先行投資したお金をを回収しようという目論見がレコード会社にはあるわけです。

一方で、日本でもこれは起こっていることですが、既存の有名曲の「著作権収入」の方が新しく発売された新曲の何倍もの収益を上げるということも少なくなく、この主張に妥当性があるのかというのには疑問符が付きます。

音楽作品に対する著作権という難しさ

「何、自分の著作物なのにほとんどのアーティストは自分の著作権を持っていないだと?!」と憤慨される方もいるかもしれませんが、ここには金銭的以外にもう一つ重大な問題があります。そして、こちらはそれなりに説得力があります。それは音楽は一人でできているわけではないということです。

たしかに公には、「テイラー・スイフト『Shake It Off』」というような形で出回ることがほとんどで、ともすると著作権を持つ人は歌手一人だけのように錯覚します。しかし実際には、後ろで鳴る楽器の演奏者、録音の指揮担当、全体のコーディネーター・プロデューサー等、だれ一人欠けても曲は完成しません。

CDのブックレットの最後のページには多くの場合関わったスタッフ全員の名前が書いてあります音楽好きの方で小さい字でページ一杯に名前が詰まったそれを見たことがある方も多いと思いますが、言ってしまえばこの全員が著作権を持ち得ます

一方で、法律の世界においては、一つのものには原則1人あるいは1団体の権利しか成立しません(法律の世界、特に民法における基本的・重要な原則です)。つまり、「これは鈴木さんのものでもあり佐藤さんのものでもあります」というのは法律では通用しません。どちらか1人のものでなければいけません。

ですので、テイラー・スイフトのような表に出る歌手だけがすべての著作権を持っていると、今度は裏方さんたちから不満が出かねない訳です。「俺だって協力してるのに、なんでいいとこ取りされるんだ」という訳です。こういった問題が生じるのは、レーベル会社・音楽産業としても困ります。

そうすると、実は音楽を「1人のもの」とするのはかなりの不都合があり、そこで作成チームすべてを合わせて「1つのレーベル」として著作権を持つということは、法律と現実世界の間のギャップをうまく回避する「最適解(正解ではない)」であったわけです。

表に出ている人が発信力をどんどん持っている

しかし、その最適解だんだんと崩れだしていることをこの一件は感じさせます。というのも、現代の歌手は「アーティスト」と呼ばれるように歌うだけにとどまらず様々な顔を持ちます。嫌なことがあればファンに対して直接アピールできるSNSという武器も持つようになり、自分で音楽以外のブランドをやっている人もたくさんいます。レーベルとの間でのパワーバランスが変わってしまったのではないかという気がします。

一個人として力がなかった時は、歌手としても著作権をレーベルに管理してもらうしかなかったでしょう。しかし自分で音楽以外に財を築く手段を持ち、自ら発信できるとなれば、「今まではできなかったけれど、自分の作品を自分で管理したい」という野望を抱くのは当然のことだと思います。実際、テイラー自身もこの一件以降「マスター音源の権利は自分で持つように」という趣旨の発言をSNS上で行っています。

しかし、先程も書いた通り、独りだけでは出来上がっていない音楽の音源の権利をただ一人だけが持つということが果たして良いのかということは議論すべき課題として残っています。

では、いったいどういった解決策があるのでしょう。次回の記事ではその一例を検討してみたいと思います。

お読みいただきありがとうございました。

<参考にした記事>

Carmody, B 2019, ‘Taylor Swift v Scooter Braun: When copyright gets personal’, Sydney Morning Herald, 2019年7月13日閲覧, https://www.smh.com.au/entertainment/music/taylor-swift-v-scooter-braun-when-copyright-gets-personal-20190701-p52309.html

Prior, R 2019, ‘When it comes to artists losing the rights to their songs, Taylor Swift is hardly alone’, CNN BUSINESS, 2019年7が13日閲覧, https://edition.cnn.com/2019/07/01/business/taylor-swift-rights-trnd/index.html

Bueno, A 2019, ‘Taylor Swift Is the Highest Paid Celebrity of 2019 — See Where Kylie Jenner and Kanye West Stand’, ET, 2019年7月13日閲覧, https://www.etonline.com/taylor-swift-is-the-highest-paid-celebrity-of-2019-see-where-kylie-jenner-and-kanye-west-stand

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