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アン・マリーが「Perfect」と「多様性」を語るミュージックビデオ

たくさんの音楽であふれる現代。「何を聴けばいいの?」という方にも、「もっともっと新しい音に触れたい!」という方にも新たな音楽を届けられるように。そんな思いを持ちつつ、ゆるりとコメントしていくのがakiの「今日の一曲」です。

※この記事は2018年12月13日にakiの「今日の一曲」で公開した記事を加筆・修正して公開したものです。

「あなたの思っていることを話して」

今日の一曲はこちら↓

「Perfect To Me」by Anne-Marie

・自分にとっての「完璧」とは?

タイトルになっている「Perfect To Me」という言葉の意味は、この曲では「自分にとってのPerfect」というような意味で使われていると思います。その意味の深いところも、この記事を通して分かっていただけるのではないかと思います。

ちなみに、この曲は「Speak Your Mind(あなたの思いを言葉にして)」というアルバムの中の一曲として収録されています。そして、アン・マリーは自ら性的マイノリティであることを公表しています。彼女の初のフルアルバムにこの「Speak Your Mind」というタイトルをつけたは、間違いなくそういった彼女の個人的になバックグラウンドも関係しています。

この「Speak Your Mind」というタイトルから考えると、「Perfect To Me」という曲が持つ意味も何となく見えてきます。

・ミュージックビデオを見てみよう

記事のタイトルにもなっている通り、この曲の解説ではミュージックビデオを核としていきます。というのもさきほど書いたタイトルの意味が一番よくわかる映像になっているからです。

アン・アリー 「Pefect To Me」ミュージックビデオ

この映像は、この曲を歌うアン・マリーをはじめ様々な人たちが自分にとっての「Perfect」を画面に向かって語るという一種のドキュメンタリー的仕上がりとなっています。歌い始める前のセクションでアン・マリーが何を言っているかというと、

「私にとってのPerfectは年々変わっている。今の私にとっては世界の中でみんな違うこと(being different in everyone else in a whole world)」と語っています。

そして、その後に登場する人も、みな「自分にとってのPerfect」について語ります。キーポイントとなるのは、この人たちの選ばれ方です。初めに「みんな違うこと」がPerfectだとアン・マリーが語った通り、年齢で言えば子どもからおばあさんまで、白人だけでなく人種で言えばアジア系から黒人、そして少しぽっちゃりな人からモデル体型の人、そしてボディビルダーの人、そして手を失った人も出演しています。

この出演者の選び方はもちろん意図的です。「多様性」を訴えるためにこのような布陣にしたのだと思います。

・なぜここまで意図的な描写になっているのか?

冒頭で書いた通り、アン・マリー自身が性的マイノリティの当事者であることがこういった曲やビデオを作る原動力になっているのは間違いないです。しかしこれだけ多様性を訴えるのは、トランプ大統領が就任したアメリカでは一気にマイノリティー攻撃するような雰囲気蔓延しているからだと思います。

そういった危機感がこういうビデオを作らせたのかもしれません。なかなかここまで踏み込んだ作品というのはみませんので。結果的には数多く出されるミュージックビデオの中でも一線を画す見ごたえのあるものになっています。


それにしても、ここまでしっかりとアンチテーゼを曲として出すのはすごいです。曲自体は終始ゆったりとした平和な感じで進みますが、中身の主張はなかなか骨太です。

・最後までしっかり見て!!

そして、絶対に書きたいのが、(タイトルにも書いた)このビデオの最後の部分です!なんと、アン・マリーが自ら化粧を落としてすっぴんになるという衝撃のエンディングなんです!!!

(※語弊のないように、これはネガティブな意味を全く含まないと最初に言っておきますが)化粧を落とした後のアップになった彼女の顔は、たしかに肌は光り輝く美白ではなくちょっと赤くなっていたり色が周りとは違うところがあります。それに、(大変失礼ですが)やっぱり毛穴なども見えるぶん肌がつるっとした感じではなくて質感のあるように見えます。

これはもう日本では「有り得ないこと」として受け止められると思います。男性からちょっと不思議な目で見られるだけでなく、「女性が公衆の面前に化粧もしないで出るなんて恥ずかしい」と女性からも非難されるような気がします。

そして、日本だけでなくおそらく欧米でもそういう反応をする人はいると思います。しかし彼女はそのリスクを承知でこのビデオを作ったのだと思います。

さらに、こういう作品を作れる素地がある、そしてこれが芸術としてちゃんと評価される(このミュージックビデオはすでに再生回数1050万回超)というのはやはり日本にはない欧米のすごさだと思います。

最後には、アン・マリーがすっぴんで画面いっぱいに笑った後、画面に「What does perfect mean to you?  (あなたにとって”perfect”とはどういう意味ですか)」という字幕が出ます。ビデオを見終わった後、この言葉の意味を間違いなく考えさせられることになると思います。

お読みいただきありがとうございました。

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