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EDMの新たな金字塔!マーティン・ギャリックス「We Are The People」の「表と裏」―裏編

こんにちは、akiです。

今回も、前回に引き続きこの曲を取り上げます↓

「We Are The People」 by マーティン・ギャリックス

(※「表編」はこちら!)

ただ楽しいだけじゃない、様々な「配慮」を感じる一曲

前回の表編では、楽曲そのものの素晴らしさについて触れました。今回の「裏編」では、その楽曲の裏にある配慮や意図などについて私が感じたことを書いていきたいと思います。

この後編から見ている方の為に、少し前提を説明します。マーティン・ギャリックスの「We Are The People」という曲は、今年6月からヨーロッパで始まる4年に一度のサッカー国別対抗戦「欧州選手権2020」のテーマソングです。本当は昨年に開催される予定でしたが、延期されて今年に開催されます。マーティン・ギャリックスはテーマソングのみならず大会関連のCMソングやその他の音楽もすべて手掛けることとなっています。

今回は、特にミュージックビデオを中心に前回大会の曲「This One’s For You」と比較しながら書いていきたいと思います。

We Are The People ミュージックビデオ

前回大会のテーマソング「This One’s For You」

1.女性の出演の仕方

まず、上の2つのミュージックビデオを比較して気になるのが、女性の出演の仕方です。前回大会のテーマ曲「This One’s For You」のビデオに出演している女性は、この曲を歌っているザラ・ラーソンと、あと子どもがサッカーをしているのを見ている母親など、非常に少数です。

あくまで「男たちの戦い」を中心として、その周辺でかかわっていく女性たちの存在があるように思います。実際「欧州選手権」は男子サッカーの大会なので、「男たちの戦い」を描くこと自体に問題があるとは私は思いません。しかし、今回のマーティン・ギャリックス「We Are The People」のミュージックビデオを比較すると全く違った印象を受けます。

というのも、今回のミュージックビデオでは、サッカーの女子選手がサッカーをプレーする様子がビデオのかなりの時間を占めており、街中で男女が混じってフットサルをするシーンも入っています。女性の立ち位置が全く違うことがわかります。

2.華やかさか親近感か

2点目は、前回の曲のミュージックビデオでは、いわゆるサクセスストーリー的な描かれ方が多いのに対して、今回のミュージックビデオでは、あくまで日常の風景を描き出しているということです。

前回のミュージックビデオでは、これから大会に向かうらしきサッカー選手が、飛行機の機内(しかも明らかにビジネスクラス以上の席)で前に映し出された映像を見る、、というセッティングでビデオが始まります。全体として、選手たちが栄光にに到達するまでの努力を描いたような映像となっています。

一方で今回の曲のミュージックビデオでは、サッカー大会そのものというよりもむしろサッカーを通してそこに生きる人々がどのように繋がっているかということに主眼が置かれていることがわかります。お家でお隣さんと一緒にサッカーを観戦する年配の人、地元の売店でしゃべりながらサッカーを見ている(仕事しているのかしていないのかわからない)おじちゃんなど、選手たちのサクセスストーリーとは一線を画す展開です。

3.大会映像の使われ方

2点目に付随することとして、今回の曲では実際の大会映像がほとんど使われていません。よく考えると、「大会公式ソング」としてこれは考えられないことです。でも、なぜか曲として成立している。これはどういうことなのでしょうか。

「コロナ」と「WE」

これを解くカギは、「コロナ」とタイトルの「We」という言葉にあると思います。まず、ヨーロッパは日本以上にコロナで多くの方が犠牲になりました。また強力なロックダウンをしたため、社会が完全停止していた期間も日本より長く、街がゴーストタウン化している期間も長くなりました。それがいま、ワクチン接種の進展などにより徐々に状況は改善し、外食などもできるようになり、より普段の生活に近い形で人と触れ合うことができるようになってきています。

そして、「WE」です。コロナによって私たちの連帯が破壊されかけたなか、そのつながりを大切にしなければならないという機運は、日本だけでなく欧州にもあります。おそらく、多くの人が知り合いを亡くしたであろう欧州各国では、その思いは日本以上だと思います(第二次世界大戦より死亡した人が多い国もあるわけですので)。その中で、コロナが落ち着いて「さあ私たちの番!」という意識は非常に強いのだろうと思います。

またこういった状況に世界が飲み込まれているときに、いわゆるサクセスストーリーを提供するだけでは、大衆に響く音楽を提供することはできないと思います。コロナはそのサクセスストーリーの暗黒面を暴いたということもあり、ありきたりなストーリーでは響かないどころか批判の対象にすらなりかねません。

そういったことがすべて考慮されている、様々なことが「配慮」された音楽だなと思います。

ということで、マーティン・ギャリックスの新曲「We Are The People」から、配慮された面、ある種の政治的な面について私が感じたことを書きました。こういった配慮も、欧州で大々的に行われる国別対抗戦だからこそだと思います。

ただ楽しいだけでない、こういった配慮もしっかり盛り込めるのはさすがだなと思いました。

お読みいただきありがとうございました。

(※「表編」はこちら!)

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