国会法を覗いてみよう
こんにちは、akiです。
今回のコロナ危機に対する政府の対応、そして検察庁法の改正をめぐる問題でにわかに政治に対する意識が高まっているように感じます。
特に、5月15日森 法務大臣も出席して行われた検察庁法の改正の改正についての質疑はYouTubeでも公開され、多くの人に視聴されました。インターネット上には「初めて国会を見たけれど、こんなひどいもんなのか」という声も散見されました。
ということで、今回は国会について定めている「国会法」について見てみたいと思います。以下の3つの点を中心に書きたいと思います。
1.常会と臨時会
2.本会議と委員会
3.委員会は基本的に議員以外を締め出す!?
1.常会と臨時会
まずは、国会の常会と臨時会についてです。ニュースで「通常国会」と「臨時国会」という言葉を耳にした方がいるかもしれませんが、これが法律の言葉では「常会」と「臨時会」にあたります。
常会
まず「常会」から。
第二条 常会は、毎年一月中に召集するのを常例とする。
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=322AC0000000079
常会つまり通常国会は毎年1月に召集されます。ちなみにまさにいま行われているのも「常会(第200回)」です。いまの国会は1月20日に召集されています。ちなみに、常会の会期は国会法10条で「150日間」と定められています。いまの国会は6月17日に終了します。
臨時会
次に「臨時会」です。臨時会の大きな役目の一つは「選挙後に開く国会」ということです。衆議院あるいは参議院の選挙が行われて、選ばれた議員の任期が始まってから「30日以内」に臨時会を開かなければなりません。
ただし、このときに先ほど挙げた「常会」や「特別会(今回は触れません)」が行われている場合にはわざわざ別に臨時会を開く必要はありません。さらに、参議院議員が選ばれて臨時会を開こうとしたそのときに衆議院選挙に突入してしまった場合、あるいはその逆の場合にも「30日以内」である必要はなくなります(国会法2条の3)。
昨年の夏に参議院議員選挙がありましたが、直後の8月5日から5日間だけ臨時会が招集されています。
常会を補うことも臨時会の役割
臨時会にはもう一つ大きな役割があります。先ほどのべたとおり、常会は1月に召集され会期は150日と決められています。では、7月以降に問題が起きたらどうするのか。そこで開かれるのが臨時会です。
国会法3条によれば、衆参「いずれかの」総議員の「4分の1以上」が議長を通じて内閣に開会を要求することになっています。また会期は両議院の一致があれば自由に決められます(10条)。
無論、3条による臨時会の召集要求を内閣が突っぱねることはできますが、「4分の1以上」が同時に要求することを却下するには内閣にも相応の説明責任が求められます。世論の批判も浴びることになります。このような形で少数意見が切り捨てられることがないよう法律上の配慮がなされています。
本会議と委員会
国会には「本会議」と「委員会」があります。本会議は議員全員が集まる場所です。それとは別に、全議員がそれぞれ「委員会」に所属します。委員会は常に存在している「常任委員会」とそうではない「特別委員会」があります(40条)。
ちなみに、常任委員会だけで衆参それぞれに17もの委員会があります(41条)。また、衆議院と参議院で微妙に構成が異なります(42条2項)。
以下にリストを作りました。
衆議院
内閣委員会、総務委員会、法務委員会、外務委員会、財務金融委員会、文部科学委員会、厚生労働委員会、農林水産委員会、経済産業委員会、国土交通委員会、環境委員会、安全保障委員会、国家基本政策委員会、予算委員会、決算行政監視委員会、議院運営委員会、懲罰委員会
参議院
内閣委員会、総務委員会、法務委員会、外交防衛委員会、財政金融委員会、文教科学委員会、厚生労働委員会、農林水産委員会、経済産業委員会、国土交通委員会、 環境委員会、 国家基本政策委員会、 予算委員会、決算委員会、行政監視委員会、 議院運営委員会、懲罰委員会
委員会にはメディアは入れない!!
本会議と違った委員会の最大の特徴というべきなのは、基本的に議員以外の傍聴やメディア関係者の立ち入りは一切禁止されていることです。
これは国会法52条に定められています。
第五十二条 委員会は、議員の外傍聴を許さない。但し、報道の任務にあたる者その他の者で委員長の許可を得たものについては、この限りでない。
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=322AC0000000079 (傍線、強調は筆者)
○2 委員会は、その決議により秘密会とすることができる。
○3 委員長は、秩序保持のため、傍聴人の退場を命ずることができる。
ですので、この前の森大臣の質疑が行われたのは「衆議院内閣委員会」であり、公開されたのは実は例外なのです。また予算委員会も生中継されることが多くありますが、これもまた例外です。
とは言っても、例えば外務委員会では外交機密を扱う場合もあることは容易に想像できますから、議員以外の傍聴を認めないことには一定の正当性があります。ただこの条文に「情報公開」や「知る権利」との緊張があることは事実です。
ということで、国会法についてとても簡単に説明しました。他にも大事な点は多くありますが、これ以上書くとパンクしてしまうため大幅に簡略しました。長々とお読みいただきありがとうございました。
この記事に掲載している条文はすべてe-Govより引用しました。ぜひこちらもご覧になってください。