president obama and trump
世界のニュースななめよみ

「ここまで違う!」オバマ・トランプ両大統領の一般教書演説を比較してみた。【2月2週の国際ニュース】

こんにちは、文化ブロガーのakiです。この「世界のニュースななめよみ」では、海外の新聞やニュースサイトの情報を基に、私が有益だと思った情報をピックアップしてお伝えします。

オバマ前大統領との比較からトランプ大統領の演説の真意を見てみる

今日は、現地時間2月5日火曜日に行われた、トランプ大統領の一般教書演説をのみ取り上げます。この演説は、ここに取り上げるところはたくさんありますが、この記事では前大統領のオバマ氏が最後に行った一般教書演説と比較する形で特に2つの演説の違いに着目して、トランプ大統領の演説を見ていきす

トランプ大統領の今年の一般教書演説

オバマ氏の2016年一般教書演説

この記事では、演説中の言葉について(分:秒)と時間を示して言及することがあります。この時間は、上の二つの動画内の時間です。他の動画ですと時間が前後する可能性があります。

2つの演説を比較すると、2人の政治的主張の違いだけでなく、どうすればより多くの人を説得する話ができるのかということも見えてくるような気がします。それでは、違いを見ていきます。

<この記事で重視する視点>
 ・2人の演説が見ている時間的ベクトルの違い
 ・2人の演説の意外な共通点とそれに対する対処の違い


・「アメリカを再び偉大にする」というトランプ大統領は、実は過去を見ている。

まずは演説の冒頭を見てみます。冒頭を見れば、これから話者がどういった話をしてくかという大筋がわかります。そして、この2人の演説では冒頭を比較すると2人がどの時代に向けて行っているかということが良くわかります。

トランプ大統領は、なんと今回の演説で10人以上のゲストを呼び、それぞれの人を称賛して、その度に議場全体が総立ちになり拍手が巻き起こるという異常な演説でした。

そのゲストたちの中で最初に紹介されたのは、なんと第2次世界大戦のノルマンディー上陸作戦に従軍した元軍人です(8:26)。そして、その直後に紹介されたのが、アポロ11号で月面に着陸したバズ・オルドリン宇宙飛行士です(9:39)。

そして、この直後にトランプ大統領が述べた一節を、長くなりますが引用します。

In the 20th century, America saved freedom, transformed science, redefined the middle class, and when you get down to it, there is nothing anywhere in the world that can compete with America. [applause] now we must step boldly and bravely into the next chapter of this great American adventure. We must create a new standard of living for the 21st century.

※aki訳:20世紀には、アメリカは自由を保護し、科学分野を前進させ、中流階級を再定義し、そして(他国の)人々がこれらに取り組むと、アメリカと競争ができる国は世界にどこにもなくなっていました。[拍手]いま私たちは大胆にそして勇敢にこの「偉大な」アメリカの冒険の新しい証へと歩みを勧めなければなりません。私たちは21世紀の新しい生活の基盤を築かなければなりません。

https://www.vox.com/2019/2/5/18212533/president-trump-state-of-the-union-address-live-transcript

これだけでもう丸わかりですが、トランプ大統領は過去の栄光を称賛し、「そこにもう一度近づくのだということ」を主張しています。メディアの中では、この演説では「トランプ氏の過激な発言が収まった」という趣旨の記事を書いている方もいましたが、むしろ歴史を過度に称賛する態度が見て取れるためとても危険だと思います

トランプ氏は基本的に過去を向いた演説を行うことをここで宣言しているといっても良いと思います。考えてみれば、トランプ氏が掲げる「Make America Grate Again (もう一度アメリカを偉大にする)」というのは「もう一度」というのですから原型がどこかにあるのです。つまり、トランプ氏の「偉大さ」の原型が第二次大戦からアメリカが超大国となった時代にあることが明確に示されたといえます。

それに対して、オバマ前大統領は演説の冒頭(2:50)でこう述べています。

for my final address to this chamber, I don’t want to just talk about next year. I want to focus on the next five years, the next ten years and beyond. I want to focus on our future.

※aki訳:この議会での私の最後の演説として、私は来年についてだけ話したくはありません。私は次の5年、次の10年、そしてさらに先のことを見すえて話したいのです。私は未来のことを話したいのです。

https://www.nytimes.com/2016/01/13/us/politics/obama-2016-sotu-transcript.html

明らかな未来志向の演説であることがうかがえます。ですから、この演説中盤では未来の世代のための教育のこと(教師の育成、大学の学費軽減など 45:54)が出てきますし、全体としてもオバマ氏の演説はこの方向性に貫かれています。

ということで実は、この2つの演説は時間的に向いている方向が真逆なのです。「これからアメリカを再び偉大にする」という人が実は過去にしがみついている、これはとても興味深いことです。

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・敵に対する向き合い方が2人ではまるで違う。

ここまで「違い」を強調しているこの記事ですが、「共通点」もあります。それは、演説が行われた議会がいわゆる「ねじれ国会」であるということです。わかりやすく言うと、大統領が所属する党と(下院)議会の多数派の党が異なります。そして、演説を行っている(下院)議会の議長も、大統領とは所属する党が異なります。

つまり、2人の大統領はどちらも味方より敵が多いところで演説をしているのです。しかし、この多数の敵を前にした2人の態度は全く違います。そして、敵の側の反応も全く違います

まず、トランプ大統領の今回の演説を見てみましょう。トランプ大統領は共和党の大統領です。私が一番気になったのは、演説の途中から一方(画面の右側)ばかりを見て話していることです。実は、議会の右側にはトランプ氏が所属する共和党員が座っています。つまり、トランプ氏は味方の方だけを見て話しているのです

これは大変不誠実な態度です。そして、メキシコ国境に壁を建設すること、人工妊娠中絶を禁止したりすることなど、懸案事項になればなるほど共和党の方だけを向きます。そして、共和党議員は立ち上がって拍手しますが、左側に座っている民主党の議員は起立しないどころか拍手すらしません(例えば18:32、29:45など)。

president obama and trump
やはり演説ではオバマの方が数枚上手です。

そして、このトランプ氏の演説に最も不快感を示していたように私が感じたのが、ナンシー・ペロシ下院議長です。動画でトランプ氏の後ろに2人の人が座っているのがお分かりいただけると思いますが、そのうち右側の女性がペロシ議長です。彼女は民主党でトランプ氏の対立勢力ということになります(左側にいるのはペンス副大統領、トランプ氏支持派です)。

彼女は40分過ぎから明らかに苛立っているように感じます。トランプ氏の演説を聞くこともなく書類に目を通していることも度々あります。彼女はその姿がテレビで放映されることをわかってやっているのでしょうから、これもまたかなり異常だと思います。

ここまで分断を感じられてしまうのは、少々絶望です。

では、オバマ前大統領の演説ではどうでしょう。オバマ氏は民主党の大統領ですから、トランプ氏とは逆に議会の左側の民主党が大統領支持、右側の共和党は反対派ということになります。たしかに、重要政策について話すときには共和党の議員は聞き流しています。しかし、トランプ氏の演説聞いているときの民主党議員の「白けた」態度とは明らかに違うように思います。

また、オバマ氏が演説しているときの下院議長、ポール・ライアン氏(オバマ氏の後ろに座っている2人のうち右側の男性)がとっている態度も明らかにペロシ議長がトランプ氏に向けた態度とは違います。拍手はしていませんが、それでも常にオバマ氏を見てしっかりと演説を聞いているなという印象を持ちます。また、表情もとても穏やかに感じられます。

そして、オバマ氏自身も、敵対勢力である共和党の方(右側)をしっかり見て話していることがお分かりいただけると思います。また、共和党の議員もオバマ氏に賛同できるところではスタンディングオベーションで拍手をしています(8:54など)。

敵対勢力をしっかり見て、彼らに対しても訴えかけられるオバマ氏の演説の方が威勢の良いことを言っているトランプ氏の演説よりも余裕が感じられるような気がします。

この記事で「政敵」という言葉を頻繁に使いましたが、結局ある意味では共和党であれ民主党であれ一緒に国の政治を決めていく仲間なのですから、しっかり相手も見て話さなければいけないと思います。トランプ氏の今回の演説は個別でみても異常なところが多かったように思いますが、演説に定評のあるオバマ前大統領と比べることでその異常さに気づくことができたように思います。

お読みいただきありがとうございました。

2人の演説の詳しい文言については以下のサイトを参照しました。

President Trump’s State of the Union address: transcript, Vox, Feb 5, 2019
https://www.vox.com/2019/2/5/18212533/president-trump-state-of-the-union-address-live-transcript

Transcript of Obama’s 2016 State of the Union Address, New York Times, Jan 12 2016
https://www.nytimes.com/2016/01/13/us/politics/obama-2016-sotu-transcript.html

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