自民党のための制度のはずだった「特定枠」という制度に注目!【2】

自民以外で使っているのは2党だけ

こんにちは、akiです。

参議院選挙の投票日が7月21日(日)に迫っています。

前回の記事で、今回の参議院選挙から導入された「比例代表」の「特定枠」という制度の成り立ちについて書きました。今回は、成り立ちの要因となった自民党以外の政党がどのようにこの新制度に対応しているのかを見ていきます。

(※2019年8月1日追記)先日の選挙以降初めての参議院が始まります。今回の選挙ではこの特定枠を利用した政党「れいわ新選組」から2人の議員が誕生しました。それにより、特定枠という制度がにわかに注目を浴びています。この結果から、一見すると特定枠の導入は「良いこと」のように思えますが、全くそうではないということを2記事にわたって解説しています。前半の記事では導入の経緯、そして後半のこの記事では野党のこの制度に対する反応と具体的に「れいわ新選組」とった戦略について書いています。

ほとんどの党は「特定枠」を使っていない

まず特筆すべきことは、自民党以外の既成政党はすべてこの制度を利用していません。前回の記事で書いた通り、「特定枠」に入った人は他の候補者を差し置いて優先的に当選することになるので、それだけ票を確保できる見込みのある党でないとなかなか積極的に利用するのは厳しいという現実があります。現在の国会情勢をみれば、そのような党は自民党に限られるでしょう。

もう一つの大きな足かせ

「特定枠」には利用しずらい理由がもう一つあります。それは、「特定枠に入った候補は、自らの選挙運動ができない」ということです。選挙カーの利用、ビラ・チラシの配布、ポスターの掲載、個人演説といったことはすべて禁止されています。優遇される分、自由度にも制限があるのです。優先的に当選するのに、自分では選挙活動ができない、つまり党に「当選させてもらう」制度とも言えますから、一強他弱の中で野党にはとにかく使い勝手は悪いと考えられます。この点からもある程度の票を間違いなく獲得できる見込みのある自民党のための制度といえるでしょう。

では、「特定枠」を利用した党は?

一方で、この制度を利用した党が2つあります。

労働の解放をめざす労働者党

一つ目が、 林 紘義(はやし ひろよし)氏を代表とする「労働の解放をめざす労働者党(労働者党)」です。特定枠で選ばれているのは、 伊藤 恵子 (いとう けいこ)氏です。伊藤氏は同党から比例代表に出馬した4人の中で唯一の女性候補です。同党の公式サイトを見ると、伊藤氏を「特定枠」とすることで、労働者の中でもより低い地位にある女性の労働者の権利拡充を訴えたいという意図がうかがえます。

れいわ新選組

もう一つ「特定枠」を利用した政党がります。山本太郎氏が率いる「れいわ新選組」です。「特定枠」には2人の候補者を擁立しており、そのうちの1人が難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)である船越 靖彦(ふなごし やすひこ)氏、もう1人が木村 英子(きむら えいこ)氏です。木村氏も障害を抱えています。

策士・山本太郎

前回、そして今回の記事でも説明しているとおり、この「特定枠」という制度は「自民党のための制度」ともいえるようなもので、他の党にはかなり使いにくいものになっています。それをうまく逆手に取っているのが、「れいわ新選組」代表の山本太郎氏です。

「山本太郎」という看板がある

前回の記事で書いた「比例代表」の投票の仕組みを思い出してください。比例代表では、「党の名前」を書いても「候補者の個人名」を書いても良いのです。その点において、もともと俳優で知名度があり国会でも(様々な意味で)目立っていた山本氏は「山本太郎」と書いてもらえる可能性がかなりあります。

ですから、最悪の場合党名の「れいわ新選組」というのが有権者に覚えてもらえなかったとしても、「山本太郎」を知っていれば投票してもらえるという訳です。

あえて障害者を「特定枠」に入れるメッセージ性に着目

そして、知名度の高さで得た票を自分のためではなくあえて障害をもった候補者を当選させるために使うということは相当大きなメッセージを持ちます。口先だけではなく、実際に自分のキャリアを犠牲にする形の出馬方法をとっているのですから、れいわ新選組公式サイトに書かれている「 日本を守る、とは あなたを守ることから始まる。」という主張にも説得力が増します。

選挙運動ができないという縛りも関係ない

「特定枠」の難点の1つは、「特定枠」に入った候補者は個人での選挙活動ができないことですが、れいわ新選組の場合はあまり問題にはなりません。なぜなら「特定枠」に入った2人の候補者はいずれも重度の障害を抱えており、選挙期間中に北海道から沖縄まで全国を行脚することは非常に難しいと言えるからです。

それならば、全国行脚は知名度があり「特定枠」でもない山本氏が自ら出向けばよいということになります。こういったところにも戦略的にこの制度を使っていることを感じさせます。

つまり、自民党がいわば仲間を「守る」ために作った制度を山本氏は「攻め」に使ったと言えます。機転をうまく効かせた発想だと言えるでしょう。

自民党以外で今回「特定枠」を利用したのが2党だけということもあり、この制度に有用性があるのかは今回の選挙の結果だけではわからない部分もあります。しかし、各党の主張の核となる候補者をあえて特定枠に入れるというやり方は一定程度の効果を上げるのではないかと思います。また、これからの参議院選挙でこのやり方を使う党が他に出てくる可能性も十分にあると思います。

まずは、結果を待つことにしましょう。

参議院選挙は7月21日(日)が投票日です。

※7月23日追記:船越氏、木村氏はお二方とも当選。一方で山本代表は落選しました。
労働者党は議席を獲得できませんでした。

前回の記事→「 自民党のための制度のはずだった「特定枠」という制度に注目!【1】 ―合区の迂回?

<参考にしたサイト>

「参議院議員選挙制度に関する公職選挙法改正の概要」、総務省、2019年7月15日閲覧、
http://www.soumu.go.jp/main_content/000566100.pdf

「参院選 2019立候補者一覧」、日本経済新聞、2019年7月16日閲覧、
https://vdata.nikkei.com/election/2019/sanin/kaihyo/#/hirei/party/95

「決意」、れいわ新選組、2019年7月17日閲覧、
https://www.reiwa-shinsengumi.com/determination/

「労働者の代表を国会へ!比例区(特定枠)は伊藤恵子さん」、労働の解放を目指す労働者党、2019年5月23日、2019年7月17日閲覧、
http://wpll-j.org/gikaisennkyotousou/sennkyotousou-6.html#53

※この記事は、特定の候補者を支持または中傷するものではありません。

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