男子校の卒業生がいきなりユニセックスのバスルームを使うことになって学んだこと。

もしかしたら、最も適応に苦労したことかもしれない

こんにちは、akiです。

久しぶりに留学記を更新します。

現在私はオーストラリアに留学中ですが、実はこの留学で一番戸惑ったのが「バスルーム」です。私はいま寮に住んでいますが、この寮の「バスルーム」がユニセックスであることがこの国に住み始めて一番の驚きでした。

今回はこの「バスルーム」で起きる出来事からジェンダーについて考察していきます。

「バスルーム」というのは日本で想像されるものとは少し違います。一つの大きな部屋の中に、洗面台、トイレ、シャワールームが併設(オーストラリアは慢性的な水不足なので湯船に入ることはできない)されています。図で示すと以下のようになります。これを同じフロアにいるすべての人たちでシェアすることになります。

冒頭に書いた通り、すべての性別でバスルームをシェアすることはかなり戸惑いました。自分が洗面台を使っているときに女性が隣でシャワーを浴びていたり、女性が使った直後にシャワーを浴びたり、またその逆もあります。さらに、私の隣で女性がお化粧をしたり身なりを整えていることも多々あります。

ほんの数年前まで、生徒は全員男(これはMaleという意味ですが)、教師も9割以上男性、女子トイレは職員用以外になく、更衣室はあるものの基本的にどこで着替えてもいい(本当に廊下で着替えます)という環境にいたのが、いきなりこういったことに出くわしてとても戸惑いました。

それに輪をかけてた驚いたことがあります。同じフロアにいる学生は私以外ほとんど現地の人なのですが、性別を問わずみんなタオル1枚だけを巻いて部屋から出てきてシャワーを浴び、シャワーが終わると再びタオルを巻いた状態で出てきてそのまま洗面台で歯を磨き始めるので、最初は何が起こっているのかと恐怖すら感じました。

というのも、日本では幼少期から男女が親密に関わるというのはあまりないためにそもそもこういったことに出くわすことはほぼなく、また男子校出身の私はその中でも最もコミュニケーションの機会がなかった人間だったので、相手に失礼な言動をしないか非常に心配だったのです。なぜなら、私はこの社会に迎え入れられている側ですから、ここで明らかな失態(英語で言うところのmiscondoct)をしたら信頼が得られないと思ったからです。

コミュニケーションの蓄積が自信を生む

もちろん、タオルを巻いている人を目の前にして、露出している部分をじろじろ見たり明らかに相手の尊厳を踏みにじるようなことを言ったりすることは、いかなる言い訳をしようとも許されません。しかし、失敗が怖いからずっと下を向いていればいいのかというと、それもやはり信頼してもらえません

コミュニケーションの基本は、相手の目を見て(もちろん性的な意味ではない)興味を示すことです。もちろんバスルームで何度もあっているうちに慣れてくることによって改善されていく部分もありますが、さらに重要なのは日々の会話だと気づきました。

私の場合は、廊下であったときに挨拶をすることがファーストステップでした。いきなり長々と会話することを目指してもプレッシャーが過度にかかるだけですから、しっかりと目を見てにこやかに「Hello!」と言えるように心がけました。(ちなみに、現地の人であってもあいさつした後に毎回会話を始めるわけでもないので、挨拶ができていれば最低条件はクリアしています)

ここをクリアすれば、「How are you?」「How was your day?」などから始まって軽い会話ができるようになります。私はかなり引っ込み思案なので、これが自然にできるまでに1か月以上かかってしまいました。

正直、英語のの能力がオーストラリアに来る前とは格段にあがったいまでも、彼らが話しているすべてのことがわかるわけではありません。それでも、目を見て話す、しっかりリアクションする(+笑顔)ということを徹底すれば彼らは話しかけてくれます(本当にわからないときは聞き返すのも重要です)。そういったことが重なると、コミュニケーション全般に自信が付きます。

結局、このコミュニケーション全般のスキルが向上したことが戸惑いが消えた一番の要因でした

目の前の人を見て、「あれ、どうすればいんだっけ」と固まってしまいそうなとき、今までの蓄積から「こうすればいいんだ」ということが明確になります。こうやって不安が現れては消えていくということを繰り返しているうちに、最終的に初めに感じていた戸惑いは一掃されました。

自分の中で何が起こったのか?

ここからは、この数か月で自分の中で起こったことをもう少し分析的に見ていきたいと思います。

学んできたから知っていた

いくつか文献にあたってみたところ、ジェンダーによる格差をなくすというために必要なことは、「教育」と「コミュニケーション」なのだそうです。

もう少し詳しく述べると、「教育」とは学校であればジェンダーについて学ぶ授業を行うこと、職場であれば(特に上に立つ立場の)従業員に対してジェンダー平等を学ぶ機会を与えることです。

「コミュニケーション」とは、いわば「教育」という座学に対して「実践編」で、実際にすべてのジェンダーが入り混じって交流する場を設けること、産休や育休の取得促進に始まり、あらゆる口頭または物質的な侮辱・暴力をなくしていくなど、実際の生活レベルで実践することになります。

では、これのうちどちらが先行すべきなのかというとそれは「教育」だと思います。確かに私は当初違和感を感じていましたが、一方で「排斥されているわけではない」ことはわかっていましたし、ここで何をすべきかということも分かっていました。なぜならジェンダーに関することについてすでにある程度学んでいたからです。オーストラリアでは同性婚が合法ですし、こちらに来てから行政機関の建物には必ずレインボーフラッグがあることがすぐに分かったので、多様な性についてとても寛容であることは容易に想像できました。

また、オーストラリアをはじめとする同性婚を合法とする国々がどのような歩みをたどって来たかということや、それらの国に住む人々のジェンダーに関する態度については頭の中ではある程度知っていたので、この問題について細心の注意を払うべきだということは頭の中ではわかっていました。

頭の中で分かっているからこそ実践できる

先ほどから何度か「頭の中で分かっていた」というフレーズを使いました。この言葉はあまりいい意味では使われませんが、私は「頭の中で分かっている」からこそ行動に移せるのだと思います。そもそもどういった行動をとるべきか知らないとそこに向けて努力することすら不可能です。知っていて初めて行動に移すことができます。こういった物言いはしたくありませんが、日本ではそもそも「頭の中ですらわかっていない」人が多いような気がします。

オーストラリアに渡航する前にある程度ジェンダーに関する問題について知識があったことで、私はこの国での生活により早く適応することができたとも言えます。明らかに誤った言動をして他人を傷つけることもなく済みますし、そうすれば異なる文化の人ともより早く打ち解け合うことができます。

そして何より、学んだことが実践されることで、コミュニケーションのスキルがより磨かれます。こうして見につけた能力は他人とは比べられないもので、将来的にまた新たな人と出会うときに大きな武器になるかもしれません。

まずは、環境作りからはじまる

すでに述べた通り、実践より前にまずは多くの人がジェンダーについて学ぶことが大事だと思います。今私が住んでいる寮にはすべての階のエレベーターホールにレインボーフラッグが掲げてありますし、これも先ほど書いたとおり多くの行政機関の建物上にもこの旗は掲げられています。

かといって、毎日多様な性について語りあうという訳ではありません。もはや現地の人たちは多様な性を空気のようなものとして感じているのではないかとと思います。それくらい当然の権利として広く認められているのだと思います。

これは間違いなくこれまでの「教育」によって広くジェンダー問題が認識され、そのうえで、同性婚合法化に象徴される種々の変革が起こって来た結果に違いありません。

実は、現地の人もたまにジェンダーの観点から見ると不適切な発言をしてしまうことがあります。具体例を出すと、以前、同じ階に住む男性の友人が女友達の服装についてあまりポジティブではない意味を込めた発言をしてしまいました。周りにいたのはその女性以外は全員男性だったのですが、みんな「What?」と言い出し、結局その場で謝罪して事なきを得たということがあります。

この間わずか数分、一見すると寮の中で起こる日常会話の一場面でしたが、この部分だけは一気に緊張感が増したのが私にもわかりました。こういった日常の部分から、笑って水に流すのではなく一つ一つ指摘していっているのは素晴らしいと思いました。

すでに書いた通り、やはり日本では具体的なコミュニケーションをどうすべきか以前に教育上解決すべき問題があるように私は感じています。まずは社会の中で広くジェンダーについての意識を共有するところから始めなければいけません。いままさにそういったことを目指して多くの方が活動されています。まずはこういった活動を応援し、私たち自身も積極的に学びそして実社会で少しずつでも言動を変化させていくべきだと思います。

日本でいまのオーストラリアのような環境を作るにはしばらく時間がかかるかもしれませんが、どんなに時間がかかってもこういった環境を目指せば少しずつでもジェンダーに関わることで嫌な思いをする人が減るのではないかと思いました。

お読みいただきありがとうございました。

この記事を書くにあたって参照したサイトは以下の通りです。

Gender Communication: It’s Complicated | Psychology Today
https://www.psychologytoday.com/us/blog/he-speaks-she-speaks/201606/gender-communication-it-s-complicated

School-Based Risk and Protective Factors for Gender Diverse and Sexual Minority Children and Youth Improving School Climate
https://www.apa.org/pi/lgbt/programs/safe-supportive/lgbt/risk-factors.pdf

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