あのときも孤軍奮闘していた
ついに7月9日、楽天イーグルスにあのエースが帰ってきます。
則本昂大。
杜の都の奪三振王
楽天のエースにして日本代表の投手の柱でもあり、球団、そしてリーグを越えて知名度・実力ともに知れ渡っている、わが球団の誇る大投手です。
成績を振り返ってみても、この球団の一身に背負っていると言っても過言ではありません。三重中京大からドラフト2位で入団した2013年、その年の初頭に行われたWBCで疲弊していた田中将大投手(現・ニューヨークヤンキース)に代わって開幕投手を務めます。
このときは「田中という大投手がいながら大卒新人に開幕投手をやらせるのか」と私は疑問に思っていました。しかし、ここでマー君に負担をかけずに済んだことが、その後の24連勝無敗という記録の樹立そしてリーグ初制覇に少なからずかかわったのではないかと思います。
そして、この年は開幕投手を務めただけでなく15勝8敗という素晴らしい成績を残し、日本シリーズでは中継ぎでも登板して王者・ジャイアンツ(当時の星野監督がこの表現を何度も使っていたのが印象的だったのであえてこの言い方をします)の強烈な攻撃陣を食い止め、日本一を決めた第7戦でも8回に登板して田中将大の伝説の締めくくりへと繋げました。
勝つ分だけ負けるとも言われるけれど
2013年の優勝・日本一のあとに絶対的エース田中将大がアメリカへと旅立ってからは、ピリッとしないチーム状況のなかでまさに孤軍奮闘というべき活躍を見せます。高い奪三振能力で最多奪三振を5年連続(2014~2018年)で獲得、入団して以来6年連続で2桁勝利も継続しています(残念ながら今年はそのどちらもストップしてしまうでしょう)。
「勝った分だけ負けている」とも言われますが、そうだとしてもそもそも10勝をこれだけコンスタントに出すことができるのは素晴らしい投手である証です。また、勝つ負ける以上にエースとしてチームを引っ張っていくという意志が常に感じられることはエースピッチャーといって間違いないと思います。
2年前も連敗ストップを託された
そのチームを引っ張るという意志が強く出た試合の一つが、2年前の2017年9月3日、福岡で行われた対ソフトバンク戦です。この試合は現在のイーグルスの状況と非常に良く似ています。
2017年シーズンの楽天イーグルスは、今シーズンと同じく快調に滑り出し前半戦を首位で折り返すものの、後半戦に大失速しこの試合の前までに9連敗を喫していました。そしてこの泥沼の連敗脱失を託されたのが則本投手だったのです。
結果は(ご存知の方も多いかもしれませんが)、則本投手とソフトバンク和田投手とのゼロ更新が続く投手戦の末、則本投手が9回の裏にデスパイネ選手にサヨナラタイムリーを許すという悲劇的な幕切れでした。球団創設年以来の10連敗目を喫しました。このとき、最後にデスパイネ選手に打たれた後の則本選手の行動が私はずっと忘れられずにいます。
マウンドから立ち上がれなかったエース
こちらの動画の最後にも少しだけ映っていますが、最後に打球が飛んだセンター方向を見つめて、ずっとヤフオクドームのグラウンドにしゃがみこんでいたのです。ちなみにこのとき、勝利に酔いしれるソフトバンクの選手はおろかイーグルスの選手たちもすでに引き上げ終わろうかとしていたと記憶しています。
このときの則本投手の姿はすべての魂が抜けきったような感じで、ファンとしてとてもショックを受けました。そして同時に、エースとして並々ならぬ覚悟を持ってマウンドに上がっていたことを思い知りました。楽天イーグルスの球団の歴史の中で(少なくとも私は)そういった選手の行動を初めて目にしました。
というのも、楽天イーグルスはとても生き生きしたチームで明るいのですが、負けたときにあまり悔しそうではないというのが実はファンになってからずっと引っかかっていた部分ではあったのです。これはもしかしたら仙台の方々の人柄の良さもあるのかもしれません。
※ただ、仙台に観戦に行ったときにはかなり手厳しいことを言っているファンの方も見かけましたし、東京で見ているときもそういったファンは増えている気がします。
しかし、このときに本気で悔しがっている則本投手を見て(負けた試合を見ていうのもおかしいですが)楽天イーグルスは本当の意味で「戦う」チームになっていきつつあるのだと思いました。ですから、それが少しファンとして誇らしくもあったのです。もしあの場面で則本投手が苦笑いしながらそそくさとベンチに帰っていたら怒りを感じていたかもしれません。
この話をまとめると、あの瞬間に私は(楽天イーグルス史上初めてといっていいくらい)「勝負師」としてのあり様を見て、そして改めてエースたるものの覚悟を思い知り、そしてさらにこの球団を応援してもっと強くなっていく様を見ていきたいと思ったのです。
2度同じことはして欲しくない
ここからは単なる願望に過ぎませんし、こういったことを書くことは選手に対して失礼かもしれませんが、どうしても書き残しておきたいことがあります。2年前の惨敗を経て、いちファンとしてイーグルスはあの時よりたしかに強くなったのではないかと思います。
そして星野監督が仰っていた「闘う姿」という言葉、代行時代から平石監督が繰り返している「ファイティングポーズをとって」というフレーズも、つまりは先述した「勝負師」としてのあり様をもっと高めていくということなのだろうと思います。それがうまく働いて、4,5月の苦しい時期を乗り越えて、連敗中のいまでも負け越しをしないで(7月8日試合終了時点)来れているのだと思います。
しかし、最近またあのほんわかした雰囲気のイーグルスに戻ってしまっているような気もします。なんとなくズルズルといってしまう感じがぬぐえないのです。私自身は弱いけれどほんわかした雰囲気のチームも嫌いではありませんが、もう球団ができてから15年、他の球団ともっと張り合っていくためにも、ここで戦いの灯を絶やすことなくもっと攻めていって欲しいと思います。則本投手が登板するの今日の試合はそういった感覚を取り戻す良いチャンスです。
最後に、今日の試合では最後に則本投手ひとりがうなだれているような光景は見たくありません。そして、今日勝てば負け越すことなくオールスターを乗り越えることができます。まだまだ盛り返すことはできます。今日は杜の都で勝負師が羽ばたく素晴らしいゲームを見たいと思います。
お読みいただきありがとうございました。
【以下、2019年7月14日追記】
則本投手、6回無失点の好投で今季初勝利&連敗脱出!そして打線も息を吹き返し、目の覚めるような攻撃で効果的に得点して快勝しました。
翌日もピリッとしない岸投手を打線が盛り立て、負けはしたものの敗色濃厚ら見ごたえのある試合になりました。後半戦にも期待がかかります!
※則本投手の成績はこちらを参照しました。