統計不正問題を読み解く【2】

キーパーソン登場

こんにちは、akiです。

(この記事は、Project Our Future にて昨年掲載した記事を改変し転載したものです)

毎月勤労統計の不正に関する問題は国会で大きな議論を呼んでいます。今回は、前回の記事に引き続き2019年2月14日の衆議院予算委員会の議事録からこの問題を見ていきます。

今回は、前回取り上げた大串博志委員のあとに質問に立った小川淳司(立憲会派)の質問を主に取り上げます。

小川淳司さんの以前に質問に立った大串さんの質問により、2018年3月にこの統計の集計の仕方に問題があり、実質賃金が下がることが厚生労働省から首相官邸に通知されたことが確認されました。また、厚生労働省側の窓口として宮野総括審議官、姉崎統計情報部長で、首相官邸側の窓口が当時の中江総理秘書官であったということが明らかになってます。

小川さんの答弁の時間には、現在財務省関税局長である中江氏が出席して答弁が行われました。その経過を見ていきましょう。

「○小川委員 (中略)

 中江局長、この間の国会審議で統計に対する信頼が揺らいでいることは、直接の所管外だと思いますが、政府高官としてよく御存じだと思います。加えて、勤労統計の見直しに関して相当大きな政治的な力学が働いたのではないかと私どもは思った上で質問をしている。そして、その過程においてあなたは相当主要な役割を果たした可能性があります。

 ただいまの大串委員の質疑によれば、当時の姉崎統計部長から、サンプルの入れかえに伴って相当賃金水準が過去にさかのぼって下がるという報告を聞いたとき、実態を適切にあらわすよう改善の可能性はないのかと指摘したという一連の答弁がありますが、事実関係をここでお話しください。」

小川さんはこのように尋ね、厚生労働省との折衝で「政治的な力学」つまりは官邸の意向が働いたのではないかということをただします。それに対する中江氏の答弁は以下の通りです。

「○中江政府参考人 お答え申し上げます。

 私は、二〇一八年七月、昨年ですが、昨年の七月に総理秘書官の職を辞しております。

 本日は、関税局長として所管の関税行政に関する説明を行うために出席させていただいておりますので、所管外のことについてお答え、コメントは差し控えさせていただきたいというふうに思います。」(注:強調下線、筆者)

簡単に言うと、「今日は元秘書官ではなく現職の関税局長として呼ばれたのでそれ以外のことについては答えない」というスタンスです。このような答弁に対して、小川氏は繰り返しこの問題が「極めて重大」であることから「国家公務員の一人として」の「責任」があると述べ、答弁を促しますが、中江氏の答弁は結局「答えられない」というものに終始しました。

そのため小川氏は、

「○小川委員 いずれ必ず参考人として来ていただきますので、今お尋ねしたこと、しっかり事実関係を整理して、改めて頭の整理を責任ある立場の人間としてお願いをした上で、委員長、この中江局長を、当該案件に関する参考人として、当委員会への招致を求めます。」(注:強調下線、筆者)

つまり、「元総理秘書官として」参考人招致することを野田聖子委員長に求めました。これに対して野田聖子委員長は、

「○野田委員長 後刻、理事会にて協議いたします。」

と返答しています。

日雇い外し問題

そして、小川委員がかなり強く政府をただしたのが、いわゆる「日雇い外し」の問題です。この問題は一連の統計不正の中で、2018年1月より統計の対象から「日雇い労働者」が外されていたということです。

この「日雇い外し」により、統計の対象となっている「労働者」全体でどれくらいの人数が減少したかと言うと、

「○根本国務大臣 二〇一七年十月は五千四十八万人。十一月は五千六十二万人。一七年十二月は五千六十八万人。二〇一八年一月は四千九百三十万人」

だと答弁しています。2017年12月が5068万人、2018年1月は4930万人です。138万人の減少です。2017年10月から11月にかけては14万人増加、11月から12月にかけては6万人増加であるのに対して大幅な減少が起きています。この事実は小川委員も厳しく追及しています。

「十二月、一月に特異な傾向が見られるかなと思って、過去数年さかのぼりました。大臣、聞いてくださいよ。一六年の一月は、一五年の十二月と比べて十三万人減でした。一五年の一月は、一四年十二月と比べて五万人の減でした。一四年は十五万人減、一三年は二十万人減。つまり、どの年をとっても、十二月から一月にかけて、五万から十万、せいぜい二十万の範囲内でしか変動はないんです。

 ところが、この一八年一月にいきなり前月比百十五万人減っている(筆者注:先ほどの138万人のこと)。これは日雇外しの影響ですね。」

小川氏の指摘する通り、間違いこの大幅な減少は「日雇い外し」によるものです。ただ「150万人減っただけじゃないか」という訳ではありません。これによって数値の信頼性、意味が大きく変わります。また、減少した138万人を12月の「労働者」人数の5068万人で割ると約2.7%にも上ります。これは大きな統計の意義の変更です。

この問題については、国会通信第3号の中で詳しく取り上げていますのでそちらもご覧ください。

問題が報道されたのに対して、後手後手にも見える行政機関の対応

また、小川氏はこの「統計手法の変更」が問題であることが発覚してから首相に伝えられるまでにかなり時間を要していることを追求します。

2018年12月18日にはすでに厚生労働省の幹部の間でこの問題について話し合いが行われていたにもかかわらず、20日には簡潔な報告を厚生労働大臣にしただけで、12月28日になってやっと安倍首相に報告、そして年が明けてから対外的に発表が行われました。

小川委員は、

「十八日に口頭説明で幹部間で協議をし、昨年十二月の十九日に文書で次官に説明をし、二十日に今度は口頭で大臣に説明をしている。

 これは、大西参考人にお聞きします。十九日は幹部が首をそろえて文書で議論したのに、なぜ二十日の大臣報告が簡易な口頭報告になったのか、その点、御答弁ください。」

とただします。

「○大西参考人 御答弁申し上げます。

 まず、十九日の日でございますが、お一人ずつ御説明した、そういう記憶でございます。また、二十日につきましては、事案の内容が確かでないということで、口頭で御説明をさせていただいたということ、そういう記憶でございます。」(注:強調下線、筆者)

「○小川委員 そうすると、なお一層わからなくなるんですが、これは二通り考えられるんです。

 実は、幹部は事の重大性を認識していたが、なお余り表沙汰にしたくないと思って大臣に軽微な報告をしたか、あるいは、こっちの方が、こっちもこっちで嘆かわしいんですが、幹部がこれだけがん首そろえて議論したのに、本当に事の重大性を認識できずに、大臣に対する報告が口頭で簡易なものになったのか。二つに一つなんですよね、いずれかなんですよ。そのいずれですか。」(注:強調下線、筆者)

小川委員は鋭く切り込みます。確かにこの二択しか基本的に考えられません。これに対して厚生労働省側の回答は、

「事の重要性にという点では、復元していなかったということを聞きましたので、それは次官も厚労審も私も、これは大変重要なことだ、重大なことだという認識に立ちまして、事務次官からは、速やかに大臣への一報をするようにという指示があった、重大であるからこそ事務次官に、十分事実関係は解明されていないけれども、まずは一報するようにという指示があった、こういうことだと理解をしております。」

この答弁は政府参考人として呼ばれた厚生労働省の役人である定塚官房長が行っています。これに対して根元厚生労働大臣は、

「私も、十二月二十日に一報を受けたのは、五百人以上規模の事業所において全数調査とすべきところ、東京都において抽出調査を行っていたこと、抽出調査の結果に必要な統計的処理を加えず、適切な復元処理を行わずに集計していたこと、この二点が、私、報告を受けました。ですから、私は、経緯、原因等について速やかに徹底的な調査を行うように指示をいたしました。」(注:強調下線、筆者)

このように述べました。おそらく「究明をしてから報告しようと思っていた」ということなのだと思います。

また、小川委員は予算を統括する財務省とのやり取りが肝ではないのかと考え、厚生労働省がこの問題について財務省とコンタクトを取ったのがいつであったかをただします。

「○定塚政府参考人 お答え申し上げます。

 財務省に対しましては、十二月二十八日に、厚生労働省大臣官房会計課から一報したところでございます。」

「○定塚政府参考人 お答え申し上げます。

 十二月二十七日に、抽出を復元していなかった結果、統計上の賃金額が低目に出ていた可能性があるということ、また、国民経済計算や雇用保険、労災保険給付等への影響の可能性があることということを大臣に御報告をしたということで、大臣からは影響について見定めるようにという指示がございましたが、ただ、この段階では、いずれも可能性があるという状況、これを報告したということでございまして、予算の概算の変更等を判断できるというふうな状況ではございませんでした。」(注:強調下線、筆者)

これに対して、小川委員は

「○小川委員 ありがとうございました。

 二十七日にその可能性を感じ、そして二十八日以降関係先と調整に入り、最終的に対外的に公表したのは一月の十日で、年末年始を挟んでいるという状況と承りました。」

というようにまとめています。答弁から見えてくる流れはここで小川氏がまとめた通りとなります。このことからも分かる通り、2018年12月21日の段階ではことの大きさに誰も気づいいていなかったようであることがわかります。「統計不正」も大きな失態ですが、この初動の遅れはこの問題の究明に大きな遅れをもたらしたと思われます。

今回はここまで。お読みいただきありがとうございました。

「第198回国会 予算委員会 第7号(平成31年2月14日)」、衆議院HPより、2019年3月24日閲覧
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/001819820190214007.htm#p_honbun

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