「日雇外し」問題の深刻さ
(この記事は、Project Our Future にて昨年公開した記事を改変・転載したものです)
こんにちは、akiです。
国会でいま大きな議論になっているのが、いわゆる「統計不正」問題です。厚生労働省が管理する「毎月勤労統計調査」において統計の取り方が変わっている子尾が判明した問題です。今回は、そのうち「日雇外し」と言われる問題について詳しく取り上げます。
※記事中のすべての発言は衆議院予算委員会で2019年2月14日に起こったものです。
この「日雇外し」問題を明らかにしたの立憲会派の小川淳司議員です。小川議員と根元厚生労働大臣とのやり取りを見ながら、まずは「何が問題なのか」見ていきましょう。問題は統計における「常用労働者」の定義の変更です。
根元厚生労働大臣の言葉を借りると、「二〇一八年一月の常用労働者の定義変更、これは、臨時又は日雇労働者で前二カ月の各月にそれぞれ十八日以上雇われた者、これについては常用労働者から別な枠組みに変えました」
「常用労働者と臨時労働者というジャンルがあって、常用労働者には、それまでは前二カ月で月十八日以上というのをそこに入れていたんだけれども、これがほかの調査と定義が異なるものですから、そこの定義は共通にしましょうといってやった(筆者注:変更した)」(注:強調下線、筆者)
それによって、
「一六年の一月は、一五年の十二月と比べて十三万人減でした。一五年の一月は、一四年十二月と比べて五万人の減でした。一四年は十五万人減、一三年は二十万人減。つまり、どの年をとっても、十二月から一月にかけて、五万から十万、せいぜい二十万の範囲内でしか変動はないんです。
ところが、この一八年一月にいきなり前月比百十五万人減っている。これは日雇外しの影響です」(注:強調下線、筆者)
前回の記事で私が指摘した通り、これは全体のうち2.7%、数にして138万人が減少したことになります。これは統計に大きな差をもたらす差だと思います。
「外された」だけではない?!
この「常用労働者」から外されたことに野党から批判が集まる中、根元厚生労働大臣は
「日雇労働者で前二カ月の各月にそれぞれ十八日以上雇われた者、これは除外された。しかし一方で、雇用契約期間一カ月ちょうどの労働者、これは今まで常用労働者の定義に入っておりませんでした。それを入れた。この二点があるんですよ」(注:強調下線、筆者)
また、「日雇外し」についても大臣は「ベンチマーク更新」であると度々述べています。「ベンチマーク」とは「基準」のことです。つまり単なる「基準変更」に過ぎないとしているのです。
「日雇外し」の影響は?
先ほど少し触れましたが、この「日雇外し」影響は統計のどのような面に影響を及ぼすのでしょうか?
サンプルが変わっている
一つ目は、すでに指摘している通り、2.7%の減少によってサンプル数に変更が出ていることです。変更と言ったって、たった数%ではないかという声も聞こえてきそうですが、毎月の1%未満だったものが数%変わることは大きな変更と言えるでしょう。「常用労働者」という言葉の意味が変わってしまったともいえると思います。そのため、このデータを過去のものと単純に比較してよいのかという問題が出てきます。
賃金が高めに出る?
もう一つ指摘されていることが、「賃金が比較的低い日雇い労働者を抜いたことで、統計内実質賃金が上がった」という可能性です。この点については、根元厚生労働大臣も「上振れする可能性は、その限りにおいてはあると私も思います」と西村智奈美議員(立憲民主・無所属フォーラム)の質問に答えています。
先ほどの「サンプルが変わった」ということに続いて、これも統計の正確性において重要な問題です。これもまた実質賃金を過去のデータと単純に比較してよいのかという問題を投げかけます。
実はまだ、本当にどういう影響があるのか誰も分かっていない
そして、このように「統計の意味」自体が変わりかねない変更が起きた中で最も重大なことは、「誰もどのような影響が出るかはまだ把握していない」ということです。いまのところまだ厚生労働省内で検討が行われている最中です。その一方で新しく「日雇外し」が行われたサンプルに基づくデータは毎月発表されています。
そして、精査をして「問題なし」となっても、まだこの新しい方式が始まってから1年少々しかたっていない段階のため、時間の経過とともに社会の現状を反映しないデータだという指摘を受ける可能性もあります。
どのような影響が出るかについては、根元厚生労働大臣もお茶を濁すような回答を続けています(「速やかに作業を行って、その結果をお示ししたい」と立憲民主党の大阪議員の質問に答えています)。結果的に問題なかったとしても、早期にこの点について調査し、国民に公表することが望まれます。
お読みいただきありがとうございました。
<参考文献>
「第198回 国会 第7号 (平成31年2月14日)」、衆議院HPより
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/001819820190214007.htm