大衆文化とマスメディア

新企画始動!!

いま私たちが目にしている「大衆文化(mass culture)」は20世紀前半に生まれしました。2度の世界大戦を経て世界のグローバル化が加速度的に進行し、世界はいわば一つの村のようになり地球規模で「大衆文化」が確立したようにも思えました。これがずっと続くと多くの人が思っていたはずです。しかし、新型コロナウイルス感染症が世界中に蔓延したことにより、世界は激変しています。人々の交流が強制的に絶たれたいま、これまで世界を支配してきた「大衆文化」はその存在を根底から揺さぶられています。

これまでの「大衆文化」の発展に必要だったのが「マスメディア(mass media)」の存在です。しかし、インターネットの台頭や度重なる失態により、マスメディアの絶対的な地位もここ十数年の間に大きく揺らぎ始めています。

この連載企画では、20・21世紀に世界を席巻した大衆文化とその形成に多大なる影響を与えたマスメディアさらにはグローバル化を再評価し、迫りくる新たな文化(あるいは新たな文明)に私たちはどのように立ち向かうことができるのかを考えます。

文化や文明が現れたり消えたりすることは、ともすると台風が生まれて消えるといった自然現象のようにも思えます。しかし、文化は私たちの社会の中に起こるものであり、決してどこからともなくやってくるわけではないと私は考えています。決して陰謀論を唱えたいわけではありませんが、そこに誰かの意図を見出すことができるはずだと私は考えています。このような問題意識を持ちながら、この連載を進めていきたいと思います。

記事一覧(予定を含む)

0-文化を定義する(8月26日公開)

1-大衆文化前夜~隔絶されていた私たち~

2-大衆文化とマスメディアの登場~大衆文化は「文化」なのか~

3-煽動される大衆~大衆文化は大衆「の」文化なのか~

4-双方向を目指して~大衆は無力な存在でしかないのか~

5-パクス=アメリカーナとグローバリゼーションン
 ~アメリカ一強時代の終焉は何を意味するか~

6-新たに迫りくる文化と私たち
 ~上層と下層に再び分離し、地域的な隔絶も再び広がる世界。
 新たな時代に自らの文化をどう守っていくか~

この連載における考察の「限界」

今回のような壮大なテーマを扱うにあたり、私ができることだけでなくいまの私にはできないこと、この連載の限界を示すことは非常に大切だと考えています。

まず、この連載では基本的に西洋の文脈から大衆文化を考えます。その理由は現代の大衆文化の発信源が西洋(とくにアメリカ合衆国)にあるからです。日本の大衆文化がとるに足らないという訳では全くありません。しかし、この連載では西洋世界の文脈に絞ることによって日本の大衆文化の独自性は無視されることになります。ですので、この連載で書くことが日本の大衆文化を完全に説明できるわけではありませんし、あくまで大衆文化を一つの側面から見たものにすぎません。しかし、現在の欧米と日本の大衆文化の構造は非常に似ていますからその分析には共通点があると考えていますし、そのような共通点をお伝えできるように記事を書いていきたいと考えています。ぜひ、最後までお読みいただければと思います。

この連載で使用する参考文献は以下の通りです。

Akçevin, Y. (2019). The Occupation and Americanization of Japan.

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Fluck, W. (1999). The Americanization of Modern Culture: A Cultural History of the Popular Media. Romance with America? Essays on Culture, Literature, and American Studies, 239-269.

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