文化を定義しよう
大型連載企画「大衆文化とマスメディア」の1回目となるこの記事では、文化とは何なのかということを考えます。普段何気なく使っている言葉ですが、一体どんなことを指しているのかということについて書きたいと思います。
また、ここで文化を定義することによってこれ以降の記事で誤解なく「文化」という言葉を使うことができると考えています。初回から定義についてという少し小難しい話になってしまいますが、そうぞお付き合いください。
日本語の辞書を見てみる
まず、「文化」という言葉が日本語の辞書でどのように定義されているか見てみます。
人間の生活様式の全体。人類がみずからの手で築き上げてきた有形・無形の成果の総体。それぞれの民族・地域・社会に固有の文化があり、学習によって伝習されるとともに相互の交流によって発展してきた。カルチュア。
デジタル大辞泉 小学館
これだけだと分かりずらいので、同じように使われることもある「文明」という言葉と対比してみてみましょう。文明の意味はこちらです。
人知が進んで世の中が開け、精神的、物質的に生活が豊かになった状態。特に、宗教・道徳・学問・芸術などの精神的な文化に対して技術・機械の発達や社会制度の整備による経済的・物質的文化をさす。
デジタル大辞泉 小学館
文化と文明の違いはどこに?
文化と文明の違いにはどのような相違があるかを辞書の意味から見てみましょう。まず「文化」と「文明」が非常に似た意味の言葉であることは間違いありません。どちらも人々の生活様式や社会のシステムに関することです。しかし、「文化」では学問や芸術、宗教などに焦点が置かれ、かつそれらの固有性が重視されるのに対して、「文明」は経済やモノのより普遍的な変化をとらえる傾向があるように思えます。
この違いは、英語の辞書を見るとよりよくわかります。
Culture(文化)
the way of life, especially the general customs and beliefs, of a particular group of people at a particular time(訳:生活の在り方、特にある特定の期間のある特定のグループの人たちの中にある一般的な慣習や信仰)
Cambridge Dictionary https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/culture
下線・強調・訳は筆者
Civilization(文明)
human society with its well developed social organizations, or the culture and way of life of a society or country at a particular period in time(訳:ある特定の期間において、よく発達した組織、文化、社会や国の中に息づく生活様式をもつ人類社会のこと)
Cambridge Dictionary https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/civilization
下線・強調・訳は筆者
「文化」はある特定の人たちの間でのみ通じるものとする一方で、「文明」の範囲を「人類社会」というより広い意味を持つ言葉で定義していることは日本語に見られる傾向と同じです。その傾向を英語の辞書はより分かりやすく表現しています。
この記事で使う「文化」の定義を決めよう
最後に、この連載で用いる「文化」という言葉の定義を決めます。
文化:ある時代の特定の人々で作られた社会の中でのみ通じる生活様式である、信仰や慣習
これと対比されうる文明は
文明:ある時代の人類社会に普遍的にみられる、社会制度や経済システム
と定義しました。
この定義を基に、これからの連載を続けていきたいと思います。
お読みいただきありがとうございました。