自殺報道にどう向き合うか。

その報道を見る誰か、そして自分自身を守るために。

こんにちは、akiです。

久しぶりに『ひとりごと』のコーナーを更新します。そして、今日は少し重い話になります。タイトルの通り、メディアになされる自殺をめぐる報道に私たちがどう向き合うのかということについて書きたいと思います。

まず、いままさに精神的に非常に追い込まれていて、「自殺」というワードからこちらの記事にやって来た方。こちらに電話してください。助けになってくれる人がいます。

よりそいホットライン(一般社団法人 社会的包摂サポートセンター)
0120-279-338 (24時間対応)
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それでは、本題に入っていきます。この記事では、WHOが作成し、厚生労働省が日本語版を公開している「自殺対策を推進するためにメディア関係者に知ってもらいたい基礎知識―2017年度版」を基に、私たちが自殺の報道に接した際に、情報の受け手として、また発信者として心がけるべきことを書きます。内容は以下の通りです。ここから5000字以上の長文となりますが、ぜひお読みいただければと思います。

<目次>
  ・なぜ私たちが自殺報道と「向き合う」必要がある?
  ・ガイドラインの紹介
  ・私たちができること
  ・最後に

ガイドラインの本文はこちらから閲覧・ダウンロード可能です。
厚生労働省の自殺報道に関する様々な対応はこちらからチェックできます。
WHOのガイドライン原文(英語・仏語)はこちらから閲覧できます。

今回の新型コロナウイルスの対応で世界的に株を落としているWHOですが、彼らが積み上げてきた科学的知見が全くの無駄という訳では決してありません。また、その翻訳が厚生労働省で公開されていることからも、ある程度信頼に足る情報だと私は考えています。無論、どちらの機関も信用できないと言われてしまうとそれまでなのですが、非常に有用な情報だと私は考えていますので、ぜひ最後までお読みいただければと思います。

また、この記事ではこのガイドラインを幾度も(コピペか、というレベルで)引用しますが、このガイドラインは公共物であるため、このような引用を仕方をしても著作権法上何ら問題がありません。

まず、なぜ私たちが自殺報道に「向き合う」必要があるのか

本題に入る前に、そもそもなぜ私たちのような一般市民が自殺報道に「向き合う」必要があるのかということが伝わっていないかもしれないので、ここで明確にしておきます。

まず、WHOと厚労省のガイドラインにある通り、誤った自殺報道は「模倣自殺」を引き起こす可能性が非常に高いことが科学的な知見からわかっています。つまり、自殺を報道することが新たな自殺を生む可能性があるということです。

そして、残念なことに日本にあるほとんどのメディアは科学的知見により編み出されたこのガイドラインの通りには自殺報道をしていないという現状があります。私たちは受け取る側として、このような報道の影響下にあります。もちろん、報道の仕方を伝える側が改善する必要があるのですが、その間にも自殺報道はなされますし、そのたびに我々は影響を受けます。ですから、受け取る側としてもある程度自衛する必要があるのではないかと思いこの記事を書いています。

私が推測するに、報道機関がこのガイドラインにあまり従わないのは、この中に報道の自由を一部制限するような記述があるためなのではないかと思います。そのため自殺報道の方法がすぐに激変するという事態は考えにくく、次善の策ではありますが、自己防衛をすることは必要だと考えます。

さらに、いまや私たち一般市民もSNSを通して容易に情報の発信源となります。例えば、ガイドラインに沿っていない記事をリツイートすることは、あまり望ましくないことと言えるでしょう。もそれを見たフォロワーに何か影響が出ることも考えられなくはありません。

「そんなこと気にしてられるか」という方もいるのは当然だと思いますが、「そんなこと」を気にしていればより良い社会になりうるのであれば、私はそちらの道に行きたいと思っています。どうかご理解いただければと思います。

最後に、いま新型コロナウイルス感染症が蔓延していることを受けて、自殺者が急増しています。芸能界でも仕事が激減する中で死に物狂いで生きている方もいるでしょうし、実際に(コロナに関連しているかどうかはわかりませんが)自殺者も出ました。

そもそも、人目に触れることが多い文化界の方々は様々なプレッシャーを抱えている中で、このコロナの打撃。こういうことを書くことは無礼千万であることは重々承知なのですが、おそらく様々な支援が終了していく来年以降に、私たちはさらに多くの自殺報道に接するのではないかと考えています。

そして、この報道を受ける我々もコロナで疲弊している、、、この悪循環が起ころうとしています。

そのような状況でも、自衛の方法を少しでも知っているだけで自分の人生を救うことができるのではないかと思い、この記事を書きました。

やるべきこと、やってはいけないことをリストアップ

さて、話を戻します。「自殺対策を推進するために~」というガイドラインでは、冒頭にすべての項目がリストアップされた「クイック・レファレンス・ガイド」というものがあります。この1ページを読むだけで自殺報道に関するメディアリテラシーが非常に高まります

まず、ここに挙げられている項目を全て網羅してお伝えし、太字で強調した部分について記事後半でより詳しく述べていきたいと思います。

<やるべきこと>

どこに支援を求めるかについて正しい情報を提供すること
・自殺と自殺対策についての正しい情報を、自殺についての迷信を拡散しないようにしながら、人々への啓発を行うこと
・ 日常生活のストレス要因または自殺念慮への対処法や支援を受ける方法について報道をすること
有名人の自殺を報道する際には、特に注意すること
・ 自殺により遺された家族や友人にインタビューをする時は、慎重を期すること
メディア関係者自身が、自殺による影響を受ける可能性があることを認識すること

<やってはいけないこと>

• 自殺の報道記事を目立つように配置しないこと。また報道を過度に繰り返さないこと
• 自殺をセンセーショナルに表現する言葉、よくある普通のこととみなす言葉を使わないこと、自殺を前向きな問題解決策の一つであるかのように紹介しないこと
自殺に用いた手段について明確に表現しないこと
自殺が発生した現場や場所の詳細を伝えないこと
• センセーショナルな見出しを使わないこと
写真、ビデオ映像、デジタルメディアへのリンクなどは用いないこと

ガイドラインの本文はこちらから閲覧・ダウンロード可能です。
厚生労働省の自殺報道に関する様々な対応はこちらからチェックできます。
WHOのガイドライン原文(英語・仏語)はこちらから閲覧できます。

これをお読みになって、私が「日本の多くのメディアがこのガイドラインを踏まえられていない」と言ったことがお分かりいただけたと思います。私たち視聴者はとても危険な情報に晒されているのです。

さて、以下で下線を引いた項目について詳しく述べていきます。

どこに支援を求めるかについて正しい情報を提供する

自殺報道に接した際、まずやるべきことは私たちの身の回りに同じような精神状態の人がいることを想定して、支援を求めることのできる場所を伝えることです。この記事でも冒頭でいきなり相談窓口の電話番号を書いており、唐突に思われた方もいるかもしれません。これはガイドラインのこの項目に則っています。

最近はテレビのニュースでも報道の最後に電話番号やURLが出てくることが多くなってきました。これは最後の数十秒に連絡先のシーンを追加することで対応できるので、報道機関の側でも改善しやすい部分なのだろうと感じています。

有名人の自殺を報道する際には、特に注意する

自殺報道の中でも特に注意すべきことは「有名人の自殺」です。この報道は社会に対して計り知れない影響をもたらします。ファンの模倣自殺も少なくありません。

当然、ガイドラインは「報道するな」とは言っていません。しかし、特に注意せよといっています。では何に注意するのか。有名人の自殺は、美化されたり、理由が単純化されたり、週刊誌に書かれるような不確かな自殺理由があたかも本当の理由であるかのように報道されていることもあります。こういったことはすべて望ましくありません。

実は、有名人の自殺に関しては厚生労働省が今年だけにすでに4度の警告を発しています(こちらからご覧になれます)。行政がどれだけ有名人の自殺報道を重大な問題と考えているのかがお分かりいただけると思います。

さらには、有名人の自殺についてはこれから見て行く点にも注意する必要があります。

遺された家族や友人にインタビューをする時は、慎重を期する

このあたりから、報道の自由とバッティングするような項目が出てきます。芸能人が亡くなった際に共演者や師匠や家族などに繰り返しインタビューすることがよくあります。こういったことは「自殺によってこれだけ他人から感謝されるのだ」とか「私のためにこれだけの人が泣いてくれるのだ」という印象を視聴者に与えかねません。

(「生きていろいろな人と関わる方が感謝される」というツッコミは、精神的に追い詰められてパニックになっている人には効かないのです)

自分の人生に絶望している人にとって、死ねば最後には感謝してくれるという希望を抱かせることは自殺へと向かわせる要因になります。ですから、何人もの関係者にインタービューをした様子をテレビで流すというのはあまり望ましいことではありません。

さらに、残された遺族や関係者自身が精神的に大きなダメージを負っており、過度なインタビューは彼らを自殺に追い込む可能性もあります。遺族のプライバシーへの配慮も重要です。

報道を過度に繰り返さない

これもテレビなどで頻繁にみられる光景です。事件が起きた翌朝の番組でも、その日の昼のワイドショーでも同じことを延々と話して「残念です、、、」などとコメントしているところを幾度となく見てきました。遺族や関係者のインタビューとも関連しますが、新たに別の人からお悔やみのコメントが出た際に逐一それらのコメントを紹介したり、共演したドラマの場面を流したりということも多々あります。ガイドラインに則れば、これらはすべて避けられるべきことです。

ガイドラインでは「トップニュースとして扱わないこと」とまで書いてあります。ガイドラインの要求と報道機関の対応の差が大きいことが窺えます。

自殺した具体的な場所・手段を伝えない

これはつまり「自宅で」とか「風呂場で」あるいは「首を吊って」などのことを指します。今年の自殺報道では手段について報道しているものはあまり見ませんでしたが、場所に言及している報道がほとんどだったと記憶しています。本当はこれもあまり望ましいものではありません。

特に自殺方法が特殊なものであった場合には、それがひとたび漏れてしまうとSNSなどでセンセーショナルに取り上げられてしまいます。さらには自殺リスクのある人を模倣自殺へと導く可能性を高めます。

写真、ビデオ映像、デジタルメディアへのリンクなどは用いない

自殺現場やその写真などを使うことは厳に慎まなければいけません。遺体の写真をそのまま放送するということはまずないと思いますが、自殺現場が自宅だったときに、自宅近くに警察車両等が並んでいる様子がテレビで生中継されることはしばしば見受けられます。

さらに、遺書の公開、生前のSNSへの投稿を過度に取り上げることも望ましくないとされています。

メディア関係者自身が、自殺による影響を受ける可能性があることを認識する

最後に、自殺を報道する人自身が精神的に打撃を受けてしまうということです。原因の真相を突き止めたりしているうちに、自らの精神も影響を受けてしまうということはあり得る話です。特に、報道機関の人は原因を突き止めて報道することを仕事としており、ずっとそのことを考えているわけですから、影響を受けやすいでしょう。

ここまで散々メディアのダメ出しをしてきましたが、メディア関係者自身も大きな影響を受けるのです。

私たちはどうするか

このガイドラインは報道機関向けに作られたものですが、私たち視聴者側が学べることも多くあります。

まずは、ガイドラインに沿っていない報道をリツイートしないことです。自殺場所を詳しく報じていたり、不確かな自殺の理由をまことしやかに吹聴しているような記事の拡散は思いとどまるべきだと思います。

また、記事をリツイートしなくても、自殺報道が出た際に自殺理由を勝手に推測することや、「自殺したいと思ったときは〇〇で乗り越えられた(乗り越えられる)」という非科学的な解決方法や「自殺したいなんて誰でも一回は思う」というような自殺を正当化するような言説を流布することも慎むべきではないでしょうか。

こういったことは、残念ながらインフルエンサーの方々のアカウントでときどき見られることなのですが、一見いいことを言っているようで(おそらく良かれと思ってやっている人が多いのでしょう)すが、それを見た人の自殺を思いとどまらせることには全く効果がないばかりか、むしろ自殺を促進してしまう可能性もあるのではないでしょうか。

さらに、自殺報道の記事をリツイートしたり自殺に関する書き込みをSNSにしたりすることが他人に対して影響を与える以前に、私たち自身に大きな精神的影響を与えることを意識すべきでしょう。いま、コロナ危機によって過大な精神的負担が多くの人にかかっています。そうでなくとも、現代社会とはストレス社会と言われるくらいです。誰でも精神的負荷が多くのしかかる場面があります。そうしたときには、記事を見たりリツイートしたりしている自分自身が、知らないうちに精神的に追い込まれるかもしれないのです。

最後に

「これじゃあ、もうほとんど何も言えないじゃないか!!」という意見が飛んできそうです。これには「そういうことです」としか答えられないのが本音です。

実際、私は自殺報道が出た際にはTwitter等でも沈黙を貫いています。あるいはいつも通り音楽のことやプロ野球のことをツイートしています。そもそもTwitterは低浮上気味ですが。

しかし、だからといってこの方法を記事をお読みの方に勧めるつもりは全くありません。なぜなら、私たちは他人の言動を強制的に制限するような力は持っていないからです。あるいは、誰もそういう力をもってはいけないという方が正確かもしれません。

ただ、沈黙を貫くにしろ、Twitterなどでのコメントを続けるにしろ、科学的知見の蓄積によって生まれたガイドラインの存在を知ることは有益だと思います。それがこの記事を書いた理由です。

最後に、この記事をご覧になった方でもし精神的につらい方、こちらの番号にためらわずに電話をしてください。

よりそいホットライン(一般社団法人 社会的包摂サポートセンター)
0120-279-338 (24時間対応)
岩手県・宮城県・福島県からは 0120-279-226 (24時間対応) 
050で始まる番号やLINE Outからは 050-3655-0279(24時間対応)

電話以外で相談したい方はこちらから

ガイドラインの本文はこちらから閲覧・ダウンロード可能です。
厚生労働省の自殺報道に関する様々な対応はこちらからチェックできます。
WHOのガイドライン原文(英語・仏語)はこちらから閲覧できます。

長文をお読みいただきありがとうございました。

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