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ただの原点回帰じゃない。テイラー・スイフト 「Lover」

ついに7枚目のスタジオアルバムが!

こんにちは、aki です。

今日の一曲はこちら↓

「Lover」by テイラー・スイフト

現在頂点に立つテイラー

テイラー・スイフト。その名は世界に知れ渡り、彼女の曲をじっくり聴いたことがなくても、名前を顔は一致するという方も多いのではないでしょうか。今年は「世界一稼いだセレブ」となり、いま世界の頂点に立つ歌手と言っても過言ではありません。その彼女がついに、7作目となるアルバム「Lover」を世に放ちました。今日はこのアルバムの中から表題曲「Lover」について書きたいと思います。

いまのテイラーは順風満帆ではない

世界一稼いで大成功!にも見えるテイラー・スイフトですが、実はいま大きな問題を抱えています。それが、世の中に発売されるCDやダウンロード音源の元となる「マスター音源」のほとんどを資産家に買われてしまい、テイラーがその音源に対する権利を失ってしまったことです。この問題についてはこちらの記事(『著作権』はアーティストの為になっているのか)で詳しく解説しています。

そして、アメリカの下院議員選挙において「民主党支持」を表明したことなどに代表されますが、彼女は積極的に社会に対する発言を続けています。このブログでも取り上げた「ME!」では、パニック・アット・ザ・ディスコのブランドン・ユーリーを迎え性の多様性を音楽を通して(深刻ではなく、しかし強烈に)訴えていました。このような流れの中で発売されたのが「Lover」というアルバムです。

その前に、彼女が出した「声明」を読もう

と、曲に行く前に彼女がアルバム発売と同時に出した「声明」を見てみます。これはInstagramやTwitter、YouTubeで同じ文章が公開されています。

This album is very much a celebration of love, in all its complexity, coziness, and chaos. It’s the first album of mine that I’ve ever owned, and I couldn’t be more proud. I’m so excited that #Lover
is out NOW

(このアルバムは愛することが本当に素晴らしいことだということを歌いました。愛の複雑さや温かみ、そしてカオスを全部込めています。このアルバムは私が完全に保有する最初のアルバムです。これ以上に名誉なことはありません。「Lover」を出すことができて本当に興奮しています。)

テイラー・スイフトのTwitterより、訳はaki独自

最初に言及しておかなければいけないことは 「このアルバムは私が完全に保有する最初のアルバム」 という部分。これまでのアルバムの著作権が資産家に変われてしまった原因は、テイラーが所属していたレコード会社が著作権を管理していて、そのレコード会社の合併によるものです。そのため、彼女は今回から自身の楽曲の著作権を自ら管理することにしました。

「Lover」のミュージックビデオの最後には「©Taylor Swift」という表記が出てきます。前アルバム「Reputation」に収録された曲やそのミュージックビデオまでは「©Big Machine Record」と表記されているはずです。

このビデオの最後に「©Taylor Swift」という字幕が登場します

些細なことかもしれませんが、プロモーションの言葉にわざわざ「初めて私が保有するアルバム」という一言を入れることが、これで痛い目をみたテイラーのこだわりが感じさせます。

愛の「温かみ」を歌ったのが「Lover」

さて、前置きが長くなりましたが今日取り上げる「Lover」という曲について見ていきます。テイラーが出した「声明」の中で、彼女は愛の「複雑さ」「温かみ」「カオス」を歌ったと述べています。その中で特に「温かさ」に焦点があてられたのがこの「Lover」という曲です。

前作「Reputation」で自身に勝手なイメージを押し付ける社会を風刺したり、選挙で民主党への支持を表明したり、「多様な性」をテーマにした楽曲を出したりと、音楽家という視点を通して政治・社会問題に切り込むことが多かった最近のテイラーですが、この「Lover」は政治的なものを離れたラブソングです。最初から最後まで決して急ぐことなくゆったりとしたリズムで歌われ、歌詞が心の奥深くまで届いてきます。

アルバムのリリースに先立って公開されたリリック・ビデオでは、白い幕に投影された映像の中に楽し気なテイラースイフトの姿が。とにかく幸せな雰囲気があふれています。本当に彼女の曲でこういう雰囲気のものは久しぶりな感じがします。

正直、もっと社会問題に切り込んだような曲が出てくるのかと思っていたので「おや?」と拍子抜けした部分もあります。

また一部では、「もともとカントリーミュージックを歌っていた過去のテイラー・スイフトが戻って来た!」という意見もあるようです。確かに、最近の傾向とは明らかに違った音楽ですし、彼女が過去に発表した作品にどちらかといえば似ていると思います。

しかし、このアルバムを出すまでの彼女の直近の言動、そしてアルバム全体としてあくまで素晴らしき愛の「温かさ」という一面を取り上げただけに過ぎないということからみると、ただ単に「原点回帰」とは言えないのではないかと思います。その証左に、この「Lover」に収録されている他の曲は愛の「複雑さ」「カオス」をはじめ「ダークサイド」に焦点を当てた曲が多くなっています。

アルバム全体としては、決して「恋愛って楽しいよね~」という単純なことを言いたいわけではないのだと思います。そうした主張も、これまでのキャリアの中で培ってきたものがあるからこそできるものに違いありません。

一方で、単純に楽しいだけではないからこそ、その複雑さの中で誰かを愛するときに感じる幸福感もまた格別なものだ、ということも彼女は訴えたいのではないかと思います。シリアスな曲が並ぶアルバムの中で、そういった彼女の思い、彼女が考える本当の意味での「素晴らしさ」が存分に投影された曲がこの「Lover」なのではないかと思います。

こう考えるととても深い一曲です。

シングル1曲が出るだけでも世界の音楽好きの話題をさらう彼女の新アルバムには、おそらくこれから様々な場で多様な反応が示されるでしょう。様々な解釈が成り立つアルバムであるようにも思います。この曲、そしてアルバムがこれからどのように広がっていくのか注目です。

お読みいただきありがとうございました。

「ただの原点回帰じゃない。テイラー・スイフト 「Lover」」への1件の返信

  1. 曲調的には一昔前のテイラーに戻ってファンとしてはすごく懐かしく嬉しいですが、やはり歌詞の内容的にはこれまでのテイラーのようです。
    また完全なる原点回帰でカントリーミュージックを聴かせてくれる日が来ることを祈ってます。

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